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税理士試験 国税徴収法 合格体験記(6) - 試験場の雰囲気にのまれないようにするには(写真付き)

 試験は一発勝負なので、必ずしも実力だけで合否がきまるとは限りません。たとえ完璧な準備をしたとしても、試験当日に答案用紙上でそれを表現できなければ合格することはできないのです。試験場の雰囲気にのみこまれてしまって頭が真っ白になって、実力の半分も発揮できないまま試験が終わってしまうこともありえます。

 ソチオリンピック前のテレビ番組でフィギュアスケートの荒川静香さんのインタビューが放送されていたのですが、「金メダルをとったオリンピックの演技中に何を考えていたか?」という質問に対する答えがとても興味深いものでした。乱暴に要約すると…

  • スピンの回転数を数えたり、演技のことに集中していた。
  • 途中で「これに成功すればメダルがとれる」なんて考えると集中力が途切れてミスにつながる。
  • だから、演技が始まる前から最後までどの時点で何を考えるかをあらかじめ決めておいた。

 税理士試験も同じだと思うんですよね。試験会場に着いて、自分の席に座ってから、解答用紙を受け取り、試験が始まって、終了の合図があるまで、それぞれの時点で何を考えるのかをあらかじめ決めておく。

 各時点でのチェックリストを用意しておいて、頭の中でそれを確認するようにすれば、パニックにおちいることを防いだり、つまらないミスを減らすことができるように思います。たとえば、席に着いてから試験開始の合図を聞くまでのチェックリストであれば…

  • ペンや時計、電卓などを机の上にきちんと並べる。配置は決めておく。
  • 受験票はセロテープで机に固定。
  • 携帯電話の電源を切る。必要なもの以外はすべてカバンに入れる。
  • 解答用紙が配られたら受験地と受験番号を記入(名前は書きません)。
  • すべての用紙に記入したか、番号が間違えていないかをしっかり確認。
  • 解答用紙をじっくり観察。回答欄から問題を推測することもできる。
  • 直前期の答練でおかした失敗を思い出す。同じミスは繰り返さないように。
  • 試験が始まって最初にすべきことを再確認。問題をざっと最後まで目を通すとか。
  • ゆっくりと深呼吸。
  • 合図とともに回答をスタート。

 税理士試験では試験開始の15分前に席につく必要があり、漠然と何も考えずにいるとその待ち時間って意外に長く感じると思います。そうすると必要以上に緊張するものです(私が実際にそうでした)。でも、待ち時間にやるべきことを前もって決めておくと15分って意外に短いのかもしれません。

 同じようなチェックリストを「当日朝」「会場に向かうまで」「着いてから試験場に入るまで」「回答開始直後」「1時間経過後」「終了前5分」みたいにそれぞれ作っておけば完璧です。

 さて、「試験が始まる前には解答用紙をじっくり観察しよう」とは大原の先生にも言われたことです。今回の試験では解答用紙が配られた瞬間に「分量が少ない!」と思いました。答練では2時間で解答しきれないような問題を毎回解かされていたのに、本番では2時間で余裕を持って終わりそうな分量です。「これは高いレベルでの争いになりそうだな」と、試験が始まる前に心の準備ができました。

 大原の最後の授業では、予想外に簡単な問題が出たときの対処法についてのアドバイスもありました。おかげで問題を開いてからビックリせずにすみました。何事もあらゆる事態を想定して準備をすべきですね。的確な指導をいただいた大原の講師陣には感謝しています。

    

 

 そういうわけで、試験場の写真を以下に掲載しますので、事前のシミュレーションに役立てていただければと思います。私が受験したのは3日目の国税徴収法ですが、下見として1日目の財務諸表論も申し込みをしていたので、2科目の写真がまじっています。会場は平和島の東京流通センターです。

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東京流通センターの前には大きく案内がありました。うんざりするほど暑い日でした。

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会場の入り口で試験場の案内を配布しています。これを見て自分の教室を確認します。国税徴収法は受験者が少ないので教室探しに迷うことはないかもしれませんが、簿記論や財務諸表論のように受験者が多い科目では、自分の席を探すだけでも一苦労しそうです。余裕をもって行動した方がいいと思います。ただ、あまり早く行き過ぎると、この案内を配布していません(確か配布開始は1時間前だったと思う)。

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試験場の廊下の様子。これは3日目なので人が少ないです。簿財の1日目はもっと人が多かった。できれば、前日までに会場を下見して、休憩をとれる場所などを確認しておいた方が良さそう。特に簿財一発を狙っている人は昼休みの過ごし方が重要です。休憩スペースは限られているので、廊下に座り込んでいる人も多かったです。

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これも廊下の様子(3日目)。試験開始前は便所の前に長い行列ができていました。でも、行列があったのは会場に一番近い便所だけで、下の階の便所は待たずにすぐ入れました。こういうところも先にチェックしておくと良さそうです。

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試験場からちょっと離れたところに試験本部があります。試験本部の写真はありませんが、実際には偵察に行きました。当日に受験票を忘れたのか再発行の手続(?)らしきものを受けている人がいました。また、試験本部の横には監督官の控え室があります。ずいぶんたくさんの人数がいらっしゃいましたけど、皆さん国税庁の職員じゃないですよね。アルバイトかな? 試験情報の漏洩などないのでしょうか。

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これが試験場です。展示場を使っているので広いですね。一つの長机を二人で使います。隣に良い人が来ますように。できれば、欠席してくれればもっとうれしい。

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試験官が入ってくる直前の様子。もう席は8割方うまっています。直前までみんなテキストを開いて最終確認に余念がありません。でも、直前にそんなことすると反対に緊張すると思うんですよ。だから、私はカメラを持って歩き回っていました。

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試験場はいくつかのブロックに分かれています。そのブロックごとにホワイトボードが用意されていて、注意事項などが書かれています。また、問題が配付されると解答用紙の枚数などがホワイトボードに記入されます。それを見て解答用紙の配布もれがないかを確認します。

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これは1日目の財務諸表論。ブロックごとに4~5人の監督官が配置されるようです。彼らが問題を配布したり、試験中の監視をします。この他に広い会場の最前列に全体を統括する試験官がいて、その試験官が直前の注意事項を読み上げたり、試験開始と終了の合図を出したりします。ちなみに、途中で監督官に連れられて外に出て行った人がいました。数分後に帰ってきたので、たぶんトイレにでも行っていたのではないかと推測しています。

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イスに座ったときの目線です。一人が利用できる机のスペースが推測できると思います。前の机にこちらを向いて座っているのが監督官です。

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同じ席から別の方向を撮りました。

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これは3日目の国税徴収法の会場です。席が違うとこんなに見え方が違ってきます。監督官からの距離が遠いです。

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机の上の様子。左上には受験票がずれないように、持参した両面テープで受験票を貼り付けます。時間をはかるキッチンタイマーは、会場によっては使用を認められなかったという話もあります。普通の時計で時間をはかるようにした方がいいかもしれません。

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これは初日の簿記論の様子です。会場のドアはガラスなので、なんと試験中の様子が外から見えるのです。まさに試験の真っ最中の写真です。これって、先に出た人が外から答えを教えるとか不正行為ができてしまうのでは、と心配になります。だって、私がカメラをかまえて写真を撮っていても誰も注意をしたりしないんですよ。

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同じく簿記論の試験中の様子。ガラスドアの外から撮りました。みんな真剣に電卓を叩いて計算してます。次の夏は私も簿記論を受けるので、この中の一人となるわけです。がんばらねば。

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これが12月中旬に送られてくる「税理士試験等結果通知書」です。まだ合格は一科目のみ。他の科目も早くそろえたいところ。それにしても試験から発表まで4カ月間は長いですよね。もっと短くならないものでしょうか。

    

今年もよろしくお願いいたします

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い申し上げます。

フリーランス専門のファイナンシャルプランナーとして、
この数年がんばってきましたが、
フリーランスの支援には税理士の資格が欠かせないと考え、
昨年春に税理士試験を受けることを決意しました。

税理士試験をパスするには5科目に合格する必要があります。
幸いなことに昨年夏の試験で1科目(国税徴収法)に合格できました。
また、今年4月からは大学院への入学も決まっていて、
そこで執筆する修士論文をもって2科目合格に代えることができます。

今年夏の税理士試験では2科目(簿記論、財務諸表論)を受ける予定で、
その2つに合格すれば5科目がそろいます。
実際に税理士登録するには実務経験が必要であるため、
税理士として仕事ができるのはまだ数年先のことになりますが、
なんとか今年中にはメドをつけたいと考えています。
はやく税理士の資格を得て、
フリーランスの皆さんのコンサルティングにいかしていきたいところです。

そういうわけで、
近ごろはほとんど受験生のような生活をしておりまして、
ブログの更新もとどこおりがちですけれど、
けっして活動をやめたわけではありませんので、
今年もよろしくお願いいたします。

税理士試験 国税徴収法 合格体験記(5) - 速くラクに文字を書くには

 これは税法科目が初めての人に向けたアドバイスです。国税徴収法の勉強をした4カ月間で、これまでの人生で書いた文字の何倍もの文字を書きました。ワープロやパソコンが普及してからは、ペンで文字を書くことなんてほとんどなくなっていますが、税法科目ではとにかく大量の文字を書かなければなりません。
 6月の答練で大きな問題に直面しました。しっかり理論を暗記していたので何を書くべきかはすべて分かっているのですが、それを時間内に答案用紙に書き出すことができないのです。試験時間は2時間ありまして、1時間くらいで手が痛くなって書けなくなってきます。「もっと速く書くことができれば…」ともどかしい気持ちでいっぱいです。だから、早い時期に文字を楽に速く書く訓練をしておくことをおすすめします。

ペンの正しい持ち方を身につける

 私は直前期に入ってから、ペンに握り方を矯正するという大冒険をしました。小学校の頃からペンを握り込むように持っていて、筆圧もかなり高い方でした。これでは2時間書き続けることができない。これを3本の指先で支えるという本来の持ち方に矯正したのです。
 「もちかたくん ユビックス」という矯正器具を使いました。最初はまさにミミズがのたうちまわったような文字しか書けず、「今から矯正して本試験に間に合うのだろうか」と不安でいっぱいでした。でも、人間に対応能力は意外にすごいもので、一週間ほどでそこそこ読める文字を書けるようになり、一カ月もたてば新しい持ち方で自然に書けるようになりました。今となっては元の握り込む持ち方に戻ることはできません。
 力を入れることなく楽に書けるペンも探しました。私にはゲルインクのボールペンが合っていたようです。2時間書き続けられるように、なるべく力を入れずに書くように意識します。いろんな本やサイトを参考にしましたが、その中でも「小指にぐっと力を入れるように意識を持つとペンを軽く持てる」というアドバイスが有効でした。

  

 

文字の崩し方のルール

 くずし字の書き方を体系的に勉強すると、読みやすさを損なうことなくスピードアップできます。それほど難しいことではありません。行書における偏(へん)や旁(つくり)の書き方をいくつか覚えるだけです。
 たとえば、言偏(ごんべん)を正直に書くと大変ですけど、行書ではチョンチョンと三画で書けます。税法科目では「税」と文字をうんざりするほど書くことになるので、禾偏(のぎへん)の略し方はぜひ最初におぼえたいところです。
 自己流のくずし字では他の人が判読できないおそれがあるので、自己流でやるのではなく、きちんとした解説書を元にして練習した方がいいと思います。

  

 

書き順が読みやすさを左右する

 私はこの機会に漢字の書き順もチェックしました。誤った書き順で文字を崩すと、他の人に読めない文字になります。たとえば、私は「万」「方」の書き順を間違えたまま覚えていました。左の払いは最後に書くのが正解ですね。だから、「万」を急いで書くと「丂」「ろ」みたいになっていました(国税徴収法においては、配当計算の中で「万」の字が何度も登場します)
 ですから、書き順にちょっとでも自信がないときは、こちらのサイト(http://kakijun.jp/)を参考にして正しい書き順を確認するようにしました。書き順が正しくなると文字のバランスが整って、読みやすくなることが自分でも分かります。自分の字が下手くそなのは、書き順も一つの原因になっているのだと気付きました。
 私は一文字ずつサイトで書き順を調べましたが、後でこんな本があることを知りました。書き順は体系的に勉強した方が効果的かもしれません。

 

 今年の夏の本試験が終わった後、簿記論と財務諸表論の勉強を始めたのですが、ここでは数字の書き方を練習することになりました。なんと計算用紙に書き込んだ自分の数字を読み間違うことが頻発したのです。特に「7と1」「0と6」の区別がつきづらい。本試験では1点の差で合否が決まってくるので、こんなところでミスをしてはもったいない。
 国税徴収法では計算のウエイトが小さいので問題になりませんでしたが、できることなら数字も最初に矯正しておけばよかったと思っています。こちらのサイトでは正しい数字の書き方について、間違いやすい例とともに紹介されています(http://www.mansion.mlcgi.com/kaikei_7_4.htm)。

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 いくら理論を完璧に暗記したとしても、本試験の当日に手を痛めて答案を書くことができなければ、それまでの努力はムダになってしまいます。時間の余裕があるうちに負担がかからない文字の書き方を習得することをおすすめします。また、持ち方を強制して筆圧を弱めても、やはり大量の文字を書き続けると手が痛くなります。理論を確認したり、問題をとき直したりするとき、紙に書くのではなく、ワープロに打ち込んで確認するようにした方が良かったかもしれません。

税理士試験 国税徴収法 合格体験記(4) - 理論を定着させる工夫

 専門学校に通う場合、講師が要求することをすべて確実にこなしていけば、本試験で大きなミスをおかさない限りは合格できるでしょう。これは国税徴収法に限ったことではなく、どの科目にも当てはまることだと思います。
 問題は、講師が要求する課題をすべて消化するのは、時間的にも能力的にけっして簡単なことではないところです。特に税法科目では理論の暗記が大変です。初めて大原のテキストを受け取ったとき、「これを全部暗記できるのか?」と思いました。記憶力は年齢とともに減退していくと言われていることもあり、40歳代半ばの自分にできるのか最初は疑問でした。
 試験が終わった今から振り返ると、(1)ある程度の時間を確保し、(2)やり方を間違えず、(3)集中して取り組めば、けっして難しい作業ではないと思います。そういうわけで、私の工夫の一端を紹介したいと思います。

最初に全体像をつかむ

 意味が分からず、興味のないものを暗記するのは難しい。「理解が重要」と言われますが、その前に国税徴収法の世界を「面白い」と思えるようにすることが重要だと思います。
 そこで私は、大原に通い始めた3~4月に「税大講本」(税務大学校が作った税法のテキスト。PDFファイルがウェブで公開されている。http://www.nta.go.jp/ntc/kouhon/tyousyu/mokuji.htm)を2回通読して、全体像をつかもうとしました。大原の講座ではいきなり細かい論点に入っていくので、途中で何をやっているのか分からなくなるんですよね。そこで、つねに印刷製本した税大講本をテキストとともに持ち歩くようにしていました。
 また、税大講本は5月の連休中に通読し、直前期にも2回ほど通読しました。通算では6~7回転はしていると思います。最初は通読するのにかなり時間がかかりますが、試験直前はすべての論点が完璧に近い形で頭に入っているので、1時間ちょっとで通読することができました。
 もし国税徴収法の受験を考えている人がいらっしゃれば、税大講本に目を通してみるといいです。何をやるかが具体的に分かると思います。大まかな内容は税大講本の通りですが、講座の中ではこの内容をベースとしてさらに細かいところまで見ていくことになります。

具体的なイメージを持つ

 国税徴収法の難しいのが、「滞納処分」という大多数の人にとってはなじみのない世界の話を扱うところです。所得税や相続税だったらイメージしやすいんですが、滞納処分は税務署の徴収職員が滞納者から税金を取り立てようという話です。たとえ頭では理論の意味を理解できても、それが自分とはまったく関係のない世界の話なので記憶として定着させるのは大変です。具体的なイメージを持って、自分の世界に引き寄せることが必要になってきます。
 滞納処分のイメージを具体化するのに役立つのが「4日でマスター! 徴税実務」という本です。これは地方自治体の徴収部門の人向けに書かれた徴収実務のガイドブックです。ドラマ仕立てで差押から換価、配当、緩和措置まで一通りの手続を解説しています。地方自治体向けの本なので国税徴収法ではなく地方税法の話なんですけど、滞納処分にかかわる部分は国税徴収法をそのままコピーしたようなものなので、ごく一部の例外を除いて国税に置き換えて読むことができます。
 また、NHKのドラマの原作としても知られる「トッカン」は、税務署勤務の国税庁週刊を主人公にすえた小説です。国税徴収の現場をイメージするという点では役に立つかもしれませんが、国税徴収法の勉強に直結するかはちょっと疑問ですね。国税徴収法の内容もちょこっと出てくるんですけど、「それって解釈を間違えてるんじゃない?」というところもあるし。まあ息抜きにはいいかもしれません。

  

 

法規集で書類のフォーマットを確認

 他にもイメージを具体化する方法はいくつもあります。
 たぶん受講生のほとんどは専門学校のテキストしか見ていないと思いますが、法規集にもぜひ目を通したいところです。理論の中にはいろんな書類の名前が出てきます。「差押調書」「捜索調書」「差押通知書」「差押書」「債権差押通知書」「交付要求書」「参加差押書」「配当計算書」など思いつくものを列挙するだけでもかなりの数になります。これらの書式は「国税徴収法施行規則」の中で定められていて、法規集にフォーマットが掲載されています。

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 たとえば、差押通知書に記入する項目としては、滞納国税の税目や納期限、本税・加算税・延滞税などの金額に加えて、差押財産の名称や数量、所在などを記入する欄があります。こういうフォーマットを見ると、「なるほど、こういう書類が滞納者や第三債務者に届くのか」と視覚的なイメージでとらえられます。
 また、私は理論の学習がある程度進んだ5月の連休中に、法規集で国税徴収法の条文を通読してみました。すると条文と理論テキストのズレが分かります。けっこう暗記のしやすさを優先して、条文から省かれている言葉もあるんですよね。こういうのを見ると、暗記でどこまで手を抜いていいのかが感覚として分かります。理論テキストの言い回しを一字一句まで暗記する必要はなく、その趣旨を外さない範囲で言葉を省いたり、覚えやすいように言い回しを変えてもいいわけです。

 

ネットで事例を集める

 これはあまり深入りすると時間の無駄づかいになってしまうのですが、ネットで滞納処分の事例を検索してみることもやってみました。給料を差し押さえられた人のブログ記事とか、ネットで検索するといくらでも出てきます。それを理論テキストと見比べてみると、「ああ、本当に条文通りに税務署は仕事をするんだな」ということが分かって面白いですよ。差押通知書の写真をアップしている人もいたりして実に興味深いです。

換価の理論は現場で確認

 国税徴収法で最大の難関が「換価」の理論です。他の理論に比べるとボリュームが多く、しかも他の理論と違って換価の手続が淡々と続きます。理屈で理解するのではなく、とにかく手続を暗記しなければなりません。
 これもテキスト上ですべてすませようとするからダメなのであって、税務署や国税局で行われている公売を見学してみるといいじゃないかと思います。残念ながら私はタイミングが合わずに公売を見学することはできなかったんですが、国税局に試験案内などの書類を取りに行ったとき、公売関係の資料を一式もらってきました。また、国税局の掲示板に貼りだされている公売広告の写真も撮ってきました。
 まさに理論テキストの通りに公売は進行するようです。資料や写真を見ながら公売の手続を想像してみると、無味乾燥な換価の理論も具体的なイメージと結びつけて覚えることができます。おかげで換価の理論も高い精度で頭に入れることができ、「本試験でぜひ換価の理論が出て欲しい」と思うくらいになりました。

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事例で手続をシミュレーション

 理論が8割方頭に入った直前期にやったのが「一人ロールプレイングゲーム」です。たとえば、「自分が税金を滞納したとして、税務署はどういう手続でどういう措置をとるんだろう。それに対して、自分はどのように対応すれば良いんだろう」と頭の中でシミュレーションしてみるのです。納期限を過ぎて督促状が送られてきて、それを無視して放置すると財産調査がある。その後に差押が行われ、そこで差押書や差押通知書が送られてくる。また、差押を避けるためには緩和措置の申請をしたり、不服申立をするという手もある。このように、いろんな場面を想定して、どういう手続があって、それがどの条文を根拠になされるのかを考えてみるわけです。
 自分が滞納者になるだけではなく、取引先が滞納して自分の債権に対して債権差押通知書が送られてきた場合とか、自分が抵当権を持つ不動産について差押がおこなわれた場合とか、他にも国税徴収官の立場として滞納者の給与を差し押さえる場合とか、いろんなパターンが考えられます。それぞれに付いて、最初から最後まで頭の中でシミュレーションします。
 これって理論の理解度を確認するにはとても有効だと思います。途中で「このケースではどういう手続が必要になるんだっけ」「債権者にはどのタイミングで通知がくるんだっけ」と何度も理論テキストを見直したり、法規集で調べたりすることになります。

民法などの知識で補強する

 余裕があるのであれば、民法や租税法などの入門書を読むと理解が深まると思います。たとえば、差押の理論で「使用収益をすることができる」という言い回しがでてきます。私も意味をよく考えることなく定型文として暗記をしていただけですが、試験終了後に民法の入門書を読んだところ、次のような意味があることが分かりました。
 「所有権」とはどういうものかというと、物について自由に「使用」「収益」「処分」をする権利です。財産が差押されるとその「処分」が禁止されます。しかし、不動産など特定の財産区分においては「処分」はできないけれど、所有権のうち「使用」「収益」の2つは認められます。動産のように減耗するおそれがあるものは「使用」「収益」も認められません。
 たぶん法学部で勉強した経験がある人にとっては、「そんなの常識だろ」というレベルの話かもしれません。きっと「税理士ってそんなことも知らないのか」と思われるかもしれません。代書屋として終わらないためにも法律の知識を身につけなければならないなと思いました。

  

税理士試験 国税徴収法 合格体験記(3) - 学校選び。出題予想を当てにしない

 私は国税徴収法が税理士試験で初めての科目だったので、良いスタートを切るためにも絶対に一発合格しようと思っていました。そのために、合格可能性を高めるすべてのことをやろうと考えました。
 大原とTACの両方を受講したのもそのためです。試験後にはどの学校も「予想が的中」なんてやっていますので、「自分が通っている学校が予想を外したら大変だ」と思ったのです。しかし、国税徴収法においては、そうした心配はあまりする必要はなさそうです。

 国税徴収法は「ミニ税法」と言われるとおり、法人税法や相続税法などに比べるとボリュームが小さい。本気で受かろうと思うなら、山当てなどせずに全部やればいいのです。
 それに、出題予想もいい加減なものです。大原もTACも直前期に出題予想の冊子を配布しますけど、そこには各講師の出題予想として「ここを重点的に押さえておこう」というコメントが掲載されています。講師ごとに予想は違っているわけで、すべての講師の予想を合わせるとほとんどすべての範囲になってしまいます。
 中には「計算は18条と22条、24条、26条」なんてことを書いている講師もいまして、「それって配当計算の全部やないか!」というツッコミを期待したボケだとしか思えません。
 でも、そうした複数の講師のコメントを読んでいけば、今年の場合は「差押」が最重要論点になりそうだということで予想は一致していまして、本試験の第一問もまさにその通りのものでした。そういうわけで、少なくとも今年については、学校間の出題予想が大きく割れるということはありませんでした。

 第二問の計算については「給与の差押禁止金額の算定」を予想していた講師は何人かいらっしゃいましたが、「退職手当」とピンポイントで当てた人はいなかったですね。しかし、大原の公開模試では退職金の差押可能額を算定させる問題が出題されていたので、これは大当たりと言えそうです。
 でも、受講生の立場からすれば、たくさんある答練の問題の中に一つに過ぎないんですよね。大原の公開模試を受けた人であっても「退職金の問題なんてあったっけ」とすっかり忘れている人が多いと思います。きちんと復習をしていたとしても、たくさんある論点の中の一つとして埋もれてしまい、本試験のときには意識にのぼってこなかったなんてこともあるのでは?
 大原もTACも直前期に6~7回の答練があって、そこで登場する論点は膨大なものがあり、その中のいくつかが本試験の問題とかぶるのは当然と言えます。だから、一致した個数の多さで優劣を競う意味などあまりなく、重要なのはすべての範囲をまんべんなく押さえておくことだという当たり前の結論に落ち着くと思います。
 そういうわけで、予想の当たり外れを気にして学校を選んだり、両方の講座を受ける必要はないと思います。

 むしろ私自身は2つの講座を受講することで大混乱しました。直前期には両校とも答練中心のカリキュラムとなり、「範囲指定あり4回、範囲指定なし2回」の答練を実施します。5月中旬から6月にかけては範囲指定ありの答練が続きますが、範囲とタイミングが微妙にずれているために私は大混乱におちいりました。本当は答練に向けて、その範囲をしっかり復習して定着させるべきなのに、両校の答練が交互にくるために復習のスケジュールがグチャグチャになってしまったのです。
 これではダメだと6月の中旬に作戦を変更し、大原の答練を中心にスケジュールを組み直しました。TACの答練は提出期限を守れなくても仕方ない。大原の補助的な役割としてTACの答練を活用することにしました。

 もし両方を受講しようという奇特な方が他にもいらっしゃれば、どちらをメインにするかを最初から明確にしておいた方が良いと思います。両方とも通学にすると融通がきかないため、片方はDVD/通信にするといいでしょう。メインの学校のスケジュールは動かさないで、サブの学校の答練や講義は補助的に使うようにすべきです。

     

税理士試験 国税徴収法 合格体験記(2) - 学校選び。大原とTAC

 税理士試験の国税徴収法に独学で挑むのは無謀だと思います。受験対策の教材が市販されていないし、過去問すら入手が大変です(問題だけならTACの「理論マスター」の巻末についていますが、模範解答はありません)。独学では絶対無理とは言いませんが、短期間で確実に合格するのであれば専門学校を使うべきです。
 国税徴収法の講座を開いているのは、大原、TAC、LECの3つだと思います(LECは通信だけ。他にもあったら教えてください)。この中で私は大原の「初学者短期合格コース」とTACの「直前対策コース」の2つを受講しました。合格可能性を高めるためには何でもやろうと考え、大手2校の両方を受講しました(国税徴収法は週一回の講義なので、両方の受講も可能なのです)。
 「どちらの学校が良いか」と聞かれれば、私は大原の方が良いように思えます。以下では大原とTACの講座を比較していきますが、これはあくまで個人的な感想です。

学校ごとに指導方法の違いがある

 TACの授業の中では「これは覚えて書けるようにしておいてください」「これも覚えて書けるようにしておいてください」というフレーズを何度も何度も何度も繰り返し聞きました。理論暗記が重要なことは受講生は誰でも知っています。でも、すべてを暗記できないから、受講生はみんな悩んでいるわけです。TACの授業はポイントを絞り込めていないように思えました(これは推測なんですけど、講師の頭が良すぎて、一般の感覚とずれているのではないかと…)。
 この点、大原ではどこを重点的に覚えるべきかを具体的に指示してくれます。たとえば、財産調査の理論では「任意調査の要件はしっかり暗記。罰則は最近改正されたので暗記した方がいい。強制調査は前々回の試験で出題されたので、押さえとして要件だけ覚えておく。他の項目は余力がある人だけでかまわない」といったかんじです(実は財産調査は今年の本試験で出題されたところで、まさに「しっかり暗記すべき」とされた任意調査の要件が問われました)。
 膨大なボリュームがある換価の理論については「全部覚えるのは難しい。ポイントだけ覚えておいて、もし出題されたらその場で作文して対応する。換価の理論を完璧に覚えている人なんてほとんどいないから、ここでは6割の出来で十分」という割り切りようです。
 さらに暗記のタイミングについても指導があります。大原の理論テキストには重要度に応じた★マークが付いていまして、インプット期では重要度が高い★2つの項目を覚える。連休が終わって答練が始まるところで★1つまで含めて覚える。直前期に余裕があれば★なしの項目も覚える。しかも直前期には「このペースでやれば理論を×回転できる」といった目安まで提示してくれます。
 このような試験対策に絞り込んだ指導に拒否感を持つ方もいらっしゃるでしょうが、少なくとも私が専門学校に望むのは試験に受かるためのテクニックです。国税徴収法を学問的に勉強したいなら教材や文献は他にもありますが、受験のテクニックは専門学校しか提供することができないものです。

マイペースでできるDVD/通信

 大原もTACも教室ではなくDVD/通信での受講でした。両方とも回数限定で教室で受講できるため、教室での講義にも何回か出席しています。
 TACはDVD/通信のためにスタジオで講義を撮影するのではなく、教室での講義を録画してそのまま配信するという方法をとっています。これをTACは「生講義収録で通学と変わらぬ受講効果!」とうたっていますが、これってどうなんでしょうね。
 たとえば、講師が「時間がないので急いでいきます」「今日は時間がなくてすべて触れられなかったので、この部分は後日やります」なんてことをおっしゃるのですが、教室で同じ空気を吸っていれば納得できる言葉であっても、自宅のパソコンの画面で同じ言葉を聞けば「段取りが悪いな」としか思えません。
 大原ではDVD/通信用の授業を専用に撮影して配信しています。きちんとカリキュラムどおりに時間内に収まるように収録されていて、安心して見ていられました。時間内にぴったり収めてくるところを見れば、たぶんリハーサルもやっているのでしょう。
 ちなみに教室とDVD/通信とどちらがいいのかという話ですが、人それぞれだと思います。私はフリーランスで一人で仕事をするのに慣れているので、マイペースでできるDVD/通信の方が良かったです。疑問があればそこで一時停止して調べられるし、場所によっては再生速度を速めて視聴時間を短縮することもできます。また、視聴ペースについても時間があるときは週2~3コマをまとめて見る、他の用事が立て込んでいるときはスキップする、なんて調整ができます。

教材の完成度に大きな差が

 教材の完成度は大原の方が上です。大手書店に行けば国税徴収法の理論テキスト(大原の「理論サブノート」、TACの「理論マスター」)が販売されているので、ぜひご自分の目で見比べてください。
 盛り込まれている内容は両方とも似たり寄ったりです(よく比べるとTACの理論マスターの方がボリュームが多い。これは絞り込みが不十分なのと、大原では内部教材となっている応用理論の内容まで含んでいるため)。しかし、受講生の立場から見ると、使いやすさは大原のテキストの方がすぐれています。
・先に述べたように★マークで重要度を示してくれている。「まずは★2つから覚えていこう」といった使い方ができる。
・2色刷で重要なキーワードが赤文字になっている。さらに赤いシートが付いていて、かぶせると重要キーワードが穴あきになる。
・文章で表現するのは難しいが、メリハリのあるレイアウトになっている。見出しの文字の大きさとか余白のとりかたとか。
 最後のレイアウトの点は意外に重要だと思います。理論を暗記するときは、ただ文字の情報を覚えるのは難しく、テキストのレイアウトをイメージしながら覚える方が効果的なんですよね。これを書いているのは本試験が終わってから4カ月たった12月中旬です。暗記した理論の細かいところはほとんど忘れてしまいました。でも、理論テキストのイメージは今でもぼんやりと覚えています。たとえば、財産調査の理論では、「左ページの上には任意調査の要件があり、左ページの下には強制調査の要件がある。右ページは強制調査の細かい手続が書かれている」といった大ざっぱなイメージです。
 教材については他にもいろいろありますが、TACの中の人はもうちょっとがんばってほしい。TACのテキストは誤植だらけです。毎回のように正誤表が配布される。テキストだけならまだいいのです。答練の問題にまで間違いがありました。印刷する前に校正はしないのでしょうか。
 大原の講師へ直に質問に行ったとき、たまたま机の上にあった問題用紙が目に入りました。そこには「三校」の文字がありました。三校というのは「初校」「再校」に続いて出す3回目の校正紙のことです。

(追記)TACの「理論マスター」の2014年度版では、理論の重要度表示が追加されているようです。進化してますね。

 

 

答練/模擬試験の問題にも個性が

 直前期(5月中旬以降)は大原もTACも答練が中心で進行していきます。「範囲指定ありの答練が4回、範囲指定なしの答練が2回」という構成も同じです。答練の問題は大原の方がよく練られた良問だと感じました。
 TACの答練は理論を覚えてそのまま書くという問題がほとんどです。もちろん多くの理論の中から何を選んで問題をつくるのか、TACなりのノウハウがあるとは思います。しかし、覚えていることを書き出すだけで、その場で何も考える必要がないというのはどうなんでしょうか(まあ国税徴収法のここ2~3年の試験傾向がそうなっているのも事実なんですけど)。
 また、TACは模範解答が模範解答になっていない。TACの模範解答のすべてを2時間以内に答案用紙に書き込むのは難しいと思います。分量が多すぎるのです。そして、解説のときに講師が「ここまで書く必要はない。ここは省略してもいい」なんておっしゃいます。それって模範解答じゃなくないですか?
 大原の答練では、覚えた理論をそのまま書くだけでなく、ちょっと考えさせられるような問題もあります。模範解答についても「なるほど、ここに注意して答案を作成すればいいのか」と分かるようなものになっています。まあ、模範解答とはもともとそういうものだと思うんですけどね。

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 TACについて厳しく、大原には好意的に書いてきましたが、別に大原にお金をもらっているわけでもなければ、TACにうらみがあるわけでもありません。利害関係のない一受講者としての素直な感想です。
 また、ここまで書いてきたのは、あくまで個人的な感じ方や考え方です。TACの講義の中でも得られるものはたくさんありました。たとえば、国税徴収法の枠にとらわれることなく、民法の考え方も取り入れた解説などとても参考になりました。そうした視点が、私が今回の本試験で合格点をとれた要因の一つになっているのは確かであり、その意味ではTACの講師に感謝しています。
 ただし、最小の労力で合格点を取るという視点では、私にとってはTACよりも大原のやり方がすぐれているように思えました。国税徴収法を含めた税法の体系をより深く理解したいのであればTACを選択した方がいいかもしれません。おそらくTACの講師陣はそうした深い理解が合格への道だと考えているのでしょう。もしかしたら、そういうやり方の方が合っている人がいるかもしれません。
 私の視点からは大原をおすすめしますが、大原の一人勝ちが望ましい姿でもありません。すでに現時点では受講生の数にダブルスコアくらいの開きがあります。たとえば、答練の第1回の受験者数は、大原299人、TAC80人です。公開模試については、大原393人、TAC192人です。競争のないところに進歩はありません。ここはTACに奮闘してもらって、両校が競い合いながら講座内容をさらにブラッシュアップさせていくことを期待しています。

  

税理士試験 国税徴収法 合格体験記(1) - 国税徴収法は面白い

 今年8月の税理士試験で国税徴収法に合格しました。税理士を目指そうと考えたのは今年3月のこと。3月末から講座を受けて4カ月強で科目合格にこぎつけることができました。
 国税徴収法の試験について情報を集めようとネットを調べましたが、法人税法や消費税法などのメジャーな科目に比べると情報が少ない。そこで、これから受験する方のために自分の経験などを公開しようと思います。

私が国税徴収法を選んだ理由

 税理士試験に挑戦する場合、会計科目(簿記論、財務諸表論)から手を付けて、そこをクリアしてから税法科目に進むというのが一般的です。しかし、勉強開始のタイミングによっては税法から始めてもいいのではないかと思います。
 私が税理士を目指そうと考えたのは3月のこと。試験は8月なので4カ月くらいしかありません。会計科目を4カ月で合格レベルまでもっていくのはかなり難しい。4カ月で合格を目指すなら必然的にミニ税法を選ぶことになります。その中で国税徴収法を選んだのは、大原の説明会に出席して、自分にいちばん合っていそうだと思ったためです。大原によるとミニ税法の特徴は次の通りです。
・消費税法:実務に活用できる知識が欲しい
・固定資産税:資産税のスペシャリストを目指す
・国税徴収法:理論は暗記よりも理解派
・酒税法:理論は少なければ少ないほどいい
 この中であえて選ぶとすれば国税徴収法かなあと。本当にそれだけです。深い考えが合ったわけではありません。しかし、結果として国税徴収法を選択してよかったと思っています。
 では、試験勉強に4カ月間取り組んだ結果、国税徴収法という科目の良いところを列挙していきます。

比較的ボリュームが小さい

 税法科目は暗記力の勝負ですが、法人税法や相続税法などに比べると覚えるべき理論のボリュームが小さい。大型書店(および大原やTACの書籍売場)で販売されている税法の理論テキストを見ると分かります。法人税法や相続税法よりも理論テキストのページ数が少ない。
 ページ数だけで言えば酒税法や事業税などもっとボリュームが小さい科目もありますけど、国税徴収法は重複している理論が多いので、ボリュームの割には暗記しやすいと思います。たとえば、「保全差押」と「繰上保全差押」は別の理論ですけど、要件が違うだけで、効力や手続はほぼ同じ。最初はボリュームの大きさに圧倒されるかもしれませんが、一周してみれば重複箇所が意外に多いことが分かります。
 大原には短期コースというのもあって、国税徴収法については5月に開講する講座があります(要するに3カ月間で合格を目指すというコース)。このコースからも合格者が出ているとか。
 ただし、短期間で合格レベルに達することができるということは、ライバルも同様だということです。高いレベルでの競争になるので、ボリュームが小さいから簡単に合格できるという単純な話でもありません。最終的には理論をどこまでしっかり暗記したかで合否が決まることになりそうです。私の場合、理論テキストのすべて(国税・債権間の調整や換価配当、応用理論を含む)をほぼ完全に暗記しました。

運に左右されず、実力で合否が決まる

 国税徴収法は理論だけの科目といわれます。実は「配当計算」(滞納者の差押財産について、債権者間で換価代金をどのように分配するかを計算する)というものがありますが、法人税法や所得税法の計算とはまったく違います。配当の順位を決めるのが目的であり、金額の計算は電卓なしでもなんとかなるレベル。
 たとえば、差押財産の換価代金が5,000万円だったとして、第1順位の滞納所得税に2,000万円、第2順位の滞納相続税に1,000万円、第3順位の抵当権者に2,000万円と分配する、みたいなかんじ。計算とは言いながら、配当順位の根拠を答えさせる理論問題です。
 他の税法では計算のちょっとしたミス(ケタを一つ間違えた、電卓のキーを押し間違えた)で命取りになることがあります。国税徴収法は理論さえきちんとおさえておけば、電卓の操作ミスなどで不合格になることはありません。つまらないミスによる得点のブレが少ないため、努力が結果に結びつきやすいと言えます。
 ミスであるとすれば、暗記はしていたけれど問題文の趣旨をつかみ損ねて的外れな解答をしてしまうことでしょうか。配当計算で適用する根拠条文を間違えたりすると致命的です。

スタートラインがみんな同じ

 所得税や法人税等の科目は実務経験がある人の方が有利ですけど、国税徴収法はほとんどの人にとって未知の世界です。国税徴収法の実務経験がある人って、税務署や地方自治体で徴収部門に配属されていた人くらいでしょうか。ごく一部の例外をのぞき、みんな同じラインからスタートできるので、税理士試験が初めての人だからといって不利ではありません。会計と関係のない仕事をしている人や学生でも大丈夫。簿記の知識も不要です。

改正が少ない

 たとえ一年目で失敗しても、その次の年も同じテキストを使えます。法人税法や所得税法などは毎年のように大きな改正があって、そこが出題のポイントになることが多く、最新のテキストを使って勉強しなければなりません。国税徴収法は手続を定めた法律であり、昭和34年の大改正時には徹底的に議論がされたので、その後は細かな手直しがあるだけです。一発で受かるのが理想ですけど、もし失敗しても次につなげることができます。

意外に内容が役に立つ

 国税徴収法って他の税法科目と位置づけが一つだけ違うんですよね。租税法上の分類からすると、他の税法科目はすべて課税要件を定めた「租税実体法」であるのに対し、国税徴収法だけは滞納国税の徴収手続を定めた「租税手続法」になります。また、他の税法科目を「特別法」だとすれば、国税徴収法は国税に共通した事項を定めた「一般法」です。
 国税徴収法は税務署が滞納国税を徴収する手続を定めた法律ですが、単に国税を確保するだけの目的で作られたものではありません。国税と競合する債権者を保護したり、滞納者の権利を保護するための規定も設けられています。つまり、国税徴収法を学べば、税務署の手の内を知るとともに、納税者を守る措置の法的根拠を知ることもできます。
 それに国税徴収法で扱う内容自体も面白いです。差押をするにはどういう条件がそろう必要があって、具体的にどんな手続で進んでいくのか。テレビドラマや小説でも差押ってけっこう出てくるのですが、そのたびに「この差押ってどういう法的根拠でやってるんだろう。この場合は差押できないんじゃない?」なんて別の見方で楽しめます(私はそういう視点で「半沢直樹」も見ていました)。

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 ざっと思いつくままに国税徴収法の良いところを書き連ねてきましたが、これだけではなく、書き忘れたことがあるかもしれません。まじめな人だと「実務につながる科目を選ぶべき」と考えがちですが、国税徴収法も良いところがいっぱいあるのでぜひ選択肢の一つとして考えてみてください。
 「消費税や相続税の方が実務でも役立つ」なんて言われるけど、それってどうなんでしょうね。勉強時間のかなりの部分は試験対策であって、実務のために勉強するのであれば別の効果的な方法があると思うんですよ。税理士試験に通ることが目標なのであれば、「実務」なんて視点って捨てた方がいいんじゃないかと。まあ、これから会計事務所の就職先を探すなんて人だと話は違ってきますが…。

    

フリーランスは住宅ローンの繰上返済で期間短縮型を選んではいけない

今年の税理士試験が明日から始まります。試験勉強を始めてから約4カ月で、なんとか科目合格できそうなところまでくることができました。会社づとめではないので比較的時間に余裕があったおかげです。特にこの1カ月は仕事をセーブして試験勉強に集中してきました。

でも、受かるかどうか分からない試験のために仕事を断るというのは、フリーランスとしてはすごく勇気がいることなんですよね。そんな決断ができたのも、これまで住宅ローンの繰上返済をがんばってやってきたおかげだと思います。

お金に余裕ができるたびに繰り上げ返済に回し、毎月の返済額を減らしてきました。当初は毎月の返済額が十何万円もありましたけど、今では単身者向けのアパートの家賃より安いかも。

これは繰上返済をするときに毎月の返済額を軽減する方式を選んだためです。もし期間を短縮する方式を選んでいたら、確かに返済は早く終わるでしょうが、これからも毎月十何万円もの返済を続けなければなりませんでした。そうなると仕事を断ってまで試験勉強するなんて決断はできなかった可能性が高いです。

住宅ローンの記事なんかを読むと、たいていは返済額軽減よりも期間短縮を選択すべきだと書いてあります。「期間短縮の方が利息の軽減効果が大きい」「老後の生活設計のためにも早く完済すべき」なんてことが理由にあげられていますが、これって嘘っぱちだと思います。

期間短縮の方が利息軽減効果が大きいというのは、何十年もある返済期間中で1回だけ繰上返済するという前提での計算なので、期間中に何回も繰上返済するのであればその差はもっと小さくなります。

また、フリーランスにとっては老後の生活設計なんかよりも直近の生活や仕事の方がずっと重要な課題です。仕事が急に減るかもしれないし、新しいジャンルに挑戦するためにお金が必要になるかもしれない。今は順調であってもいつ状況が変わるか分からないので、毎月の固定費はなるべく少なくしておいた方がいいのです(ただし、当面必要な資金まで取り崩して繰上返済にまわしてはいけない)。

年金をもらう年齢になっても住宅ローンが残っているのは怖いという考えもありますが、たとえば月の返済額が3万円だったらどうですか? 実際のところ私も60歳過ぎまで返済期間が残っていますけど、まったく怖さはないです。今後も繰上返済をする余裕があれば毎月の負担をもっと減らしていくつもりです。

これってフリーランスだけじゃなく会社員にも当てはまるかもしれません。毎月のローン返済のために安定収入を見込める会社員をやめられないという人も多いはず。繰上返済で毎月の返済額を減らしておけば、いざというときスパッと会社をやめて新しいことにチャレンジする決断ができることでしょう。

さて、税理士試験ですが、税理士になるには5科目に合格しないとダメで、私が今年受けるのは1科目だけ。試験勉強は何年も続きます。今後の仕事をどうするかは、とりあえず今年の試験が終わってから考えます。そんな行き当たりばったりが通用するのも、固定費を削減できたおかげなんですよね。

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国民年金の支給開始年齢引き上げ? やっぱり保険料は払い損なのか?

「国民年金の支給開始年齢の引き上げが検討されている」という先日のニュースを見て、「やっぱり年金はもらえないんだなあ」と思われた方も多いのでは。

政府の社会保障制度改革国民会議は3日、公的年金制度の課題を議論した。現在、国民年金で原則65歳となっている支給開始年齢について、早期に引き上げを検討する必要があるとの意見が大勢を占めた。清家篤会長は終了後の記者会見で、私見として「67、68歳、あるいはもう少し上の方まで引き上げていくのは、あってしかるべきではないか」との認識を示した。
支給開始年齢の引き上げは、高齢者の雇用確保対策とも関係し、準備に時間がかかるため、委員からは「できるだけ早期に議論を始めるべきだ」などの意見も出た。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130603-00000122-jij-pol&1370261900

このニュースを見て「ふざけるな!」「もう払わないぞ!」と思われるかもしれませんが、ちょっと冷静になって考えてみましょう。

いきなり支給開始が68歳や70歳にはならないはず

ある日を境に65歳から68歳や70歳に引き上げるなんてことはないはずです。過去の例を見てみると、厚生年金(定額部分)の支給開始が60歳から65歳に引き上げられることが1994年に決まりました。それで実際にどう引き上げたかというと、2001年から2013年にかけて3年ごとに1歳ずつ引き上げていきました。つまり、引き上げの決定から完了まで20年近くかかっているわけです。今回はまだ「早期検討を」と言っている段階ですから…。

支給開始年齢を引き上げる是非についてですが、国民年金がスタートしたのは1959年のこと。今から50年以上も前です。その当時と比べれば、雇用環境も変化しているし、高齢者も健康で活動的になっているのではないかと思います。昔は70歳といえばかなりのご老人というイメージですけど、今では若々しい方が多いですしね。また、今回の論議でも無条件に引き上げようというわけではなく、高齢者の雇用確保対策も同時に進めようという話になっています。

国民年金は自分の老後のためだけに存在するものではない

「年金がもらえるかどうか分からないから保険料は払わない」と主張される方も多いです。しかし、年金はもともと助け合いのために存在しているものです。自分の損得だけで考えるべきものではないと思います。

ちなみに国民年金の保険料が未納の場合、障害年金が受け取れない可能性があります。障害年金は事故などで障害を負ったときだけでなく、ガンや脳梗塞、糖尿病などで働くことができなくなったときも支給されます。「私はぜったいに保険料を払わない」と固い決意をお持ちの方は、老後の生活資金だけでなく、事故や病気への備えも同時にされることをおすすめします(民間の年金保険や所得補償保険などに入るくらいなら、素直に国民年金を払った方が損得勘定の面でも有利だとは思うんですけど)。

国民年金を金融商品として考えると…

あまり年金を損得の面から語りたくはありませんが、国民年金を金融商品という側面から見た場合、けっして悪い金融商品ではありません。むしろ民間で同等の金融商品を出そうとすると、その保険料は国民年金よりもずっと高いものになるはずです。この件については過去のブログ記事でも紹介したので、興味のある方はご覧ください。

保険料を払えないなら早めに自治体に相談

最後に、国民年金の保険料を払いたくても払えない方は、自治体(市役所や区役所など)で免除の申請をした方がいいです。免除期間中も加入期間として計算されるため、障害年金を受け取ることができますし、老後の年金も少なくなるものの受け取れます。過去の分(最大1年)もさかのぼって免除されるので、未払いのまま放置せずに早めに自治体に相談しましょう。

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住民税や国民健康保険料を払わないまま放置するとどうなる?

大家族のドキュメンタリー番組で有名なビッグダディこと林下清志さん。税金未納で差押をくらったというニュースがありました(http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20130520/enn1305201531011-n1.htm)。

「3月に預金を差し押さえられちゃったんだよ。岩手に家を探しにきていた時に、金がなくなったんで預金をおろそうと思ったら、残金が“0”になっていた。“いくらなんでも、0はねえだろ”と思って記帳したら、カタカナで『サシオサエ』って印字されて出てきたの。初めてみたよ、そんなの…」
税金の未払いが2年も続いたことが原因だった。清志さんの未払い額は、100万円にまで膨らんでいるという。

税金の取り立ては厳しいです。税務署(及び自治体)は「自力執行権」というのを持っていて、裁判所を通すことなく滞納者の財産を差し押さえることができます。ずっと税金を支払わずにいると、まずは「督促状」が送られてきて、次に「催告書」や「差押予告書」といった書類が届きますが、「どうせ脅しだろう」と甘く見ない方がいいです。税務署は銀行預金の入出金の履歴を調査することもできるので、入金がありそうなタイミングをねらって預金を差し押さえてきます。

フリーランスの場合、所得税は源泉徴収されることが多いのであまり気にすることはありませんが、問題になのは住民税と国民健康保険です。3月15日までに確定申告をすると、6月上旬には住民税と国民健康保険の通知が送られてきます。この2つは前年の所得をもとに金額が決まるので、去年の売り上げが大きかった人は今年の分が高くなります。所得税の還付金を受け取ったけれど、その分が丸ごと住民税と国民健康保険で消えてしまう人も多いはず。

フリーランスを何年もやっていると「そろそろ通知がくるころだな」と分かるのですが、フリーランスになって間もないときは何十万円という通知が送られてきてビックリすることに。しかも6月初旬に通知が来て、6月末には第1期の納期限がすぐに来るというスケジュールです。

期限までに払えなかったときでもすぐに差し押さえということはありませんが、ずっと放置しておくのは危険です。なるべく早めに自治体の窓口に相談に行った方がいいです(相談窓口の連絡先は督促状や催告書などに書いてあります)。一度に支払えないときは分割で支払うこともできるし、もし売り上げが急に落ち込んだとか病気で働けないといった理由があるときは猶予を受けることもできます。

ちなみに何もしないで放置しておくと、納期限を過ぎた部分には延滞税(年14.6%)がかかるので、引き延ばした分だけ支払う額が増えていきます。猶予を受けたときはこの延滞税が免除されることもあるので、とにかく早めに相談すべきです。

「税務署(国税)に比べると自治体(地方税)の徴収は甘い」とも言われていましたが、それを信じて逃げ切ろうとすると痛い目にあいます。2007年に所得税から住民税への税源移譲が実施されたことをきっかけに、徴収態勢を強化した自治体も増えています。ある程度の売り上げがあるフリーランスなら何十万円という額になるはずなので、たぶん見逃してはくれないんじゃないでしょうか。

また、住民税と国民健康保険の徴収を一元化するといった取り組みもあります(http://www.pref.chiba.lg.jp/shichou/gyousei/gyouseikaikaku/hunabashi.html)。「税金は払っているけど、国民健康保険はほったらかしにしている。どうせ病気しないし」なんてこともそのうちできなくなるかもしれません。