税理士試験 国税徴収法 合格体験記(2) - 学校選び。大原とTAC

By | 2013/12/21

 税理士試験の国税徴収法に独学で挑むのは無謀だと思います。受験対策の教材が市販されていないし、過去問すら入手が大変です(問題だけならTACの「理論マスター」の巻末についていますが、模範解答はありません)。独学では絶対無理とは言いませんが、短期間で確実に合格するのであれば専門学校を使うべきです。
 国税徴収法の講座を開いているのは、大原、TAC、LECの3つだと思います(LECは通信だけ。他にもあったら教えてください)。この中で私は大原の「初学者短期合格コース」とTACの「直前対策コース」の2つを受講しました。合格可能性を高めるためには何でもやろうと考え、大手2校の両方を受講しました(国税徴収法は週一回の講義なので、両方の受講も可能なのです)。
 「どちらの学校が良いか」と聞かれれば、私は大原の方が良いように思えます。以下では大原とTACの講座を比較していきますが、これはあくまで個人的な感想です。

学校ごとに指導方法の違いがある

 TACの授業の中では「これは覚えて書けるようにしておいてください」「これも覚えて書けるようにしておいてください」というフレーズを何度も何度も何度も繰り返し聞きました。理論暗記が重要なことは受講生は誰でも知っています。でも、すべてを暗記できないから、受講生はみんな悩んでいるわけです。TACの授業はポイントを絞り込めていないように思えました(これは推測なんですけど、講師の頭が良すぎて、一般の感覚とずれているのではないかと…)。
 この点、大原ではどこを重点的に覚えるべきかを具体的に指示してくれます。たとえば、財産調査の理論では「任意調査の要件はしっかり暗記。罰則は最近改正されたので暗記した方がいい。強制調査は前々回の試験で出題されたので、押さえとして要件だけ覚えておく。他の項目は余力がある人だけでかまわない」といったかんじです(実は財産調査は今年の本試験で出題されたところで、まさに「しっかり暗記すべき」とされた任意調査の要件が問われました)。
 膨大なボリュームがある換価の理論については「全部覚えるのは難しい。ポイントだけ覚えておいて、もし出題されたらその場で作文して対応する。換価の理論を完璧に覚えている人なんてほとんどいないから、ここでは6割の出来で十分」という割り切りようです。
 さらに暗記のタイミングについても指導があります。大原の理論テキストには重要度に応じた★マークが付いていまして、インプット期では重要度が高い★2つの項目を覚える。連休が終わって答練が始まるところで★1つまで含めて覚える。直前期に余裕があれば★なしの項目も覚える。しかも直前期には「このペースでやれば理論を×回転できる」といった目安まで提示してくれます。
 このような試験対策に絞り込んだ指導に拒否感を持つ方もいらっしゃるでしょうが、少なくとも私が専門学校に望むのは試験に受かるためのテクニックです。国税徴収法を学問的に勉強したいなら教材や文献は他にもありますが、受験のテクニックは専門学校しか提供することができないものです。

マイペースでできるDVD/通信

 大原もTACも教室ではなくDVD/通信での受講でした。両方とも回数限定で教室で受講できるため、教室での講義にも何回か出席しています。
 TACはDVD/通信のためにスタジオで講義を撮影するのではなく、教室での講義を録画してそのまま配信するという方法をとっています。これをTACは「生講義収録で通学と変わらぬ受講効果!」とうたっていますが、これってどうなんでしょうね。
 たとえば、講師が「時間がないので急いでいきます」「今日は時間がなくてすべて触れられなかったので、この部分は後日やります」なんてことをおっしゃるのですが、教室で同じ空気を吸っていれば納得できる言葉であっても、自宅のパソコンの画面で同じ言葉を聞けば「段取りが悪いな」としか思えません。
 大原ではDVD/通信用の授業を専用に撮影して配信しています。きちんとカリキュラムどおりに時間内に収まるように収録されていて、安心して見ていられました。時間内にぴったり収めてくるところを見れば、たぶんリハーサルもやっているのでしょう。
 ちなみに教室とDVD/通信とどちらがいいのかという話ですが、人それぞれだと思います。私はフリーランスで一人で仕事をするのに慣れているので、マイペースでできるDVD/通信の方が良かったです。疑問があればそこで一時停止して調べられるし、場所によっては再生速度を速めて視聴時間を短縮することもできます。また、視聴ペースについても時間があるときは週2~3コマをまとめて見る、他の用事が立て込んでいるときはスキップする、なんて調整ができます。

教材の完成度に大きな差が

 教材の完成度は大原の方が上です。大手書店に行けば国税徴収法の理論テキスト(大原の「理論サブノート」、TACの「理論マスター」)が販売されているので、ぜひご自分の目で見比べてください。
 盛り込まれている内容は両方とも似たり寄ったりです(よく比べるとTACの理論マスターの方がボリュームが多い。これは絞り込みが不十分なのと、大原では内部教材となっている応用理論の内容まで含んでいるため)。しかし、受講生の立場から見ると、使いやすさは大原のテキストの方がすぐれています。
・先に述べたように★マークで重要度を示してくれている。「まずは★2つから覚えていこう」といった使い方ができる。
・2色刷で重要なキーワードが赤文字になっている。さらに赤いシートが付いていて、かぶせると重要キーワードが穴あきになる。
・文章で表現するのは難しいが、メリハリのあるレイアウトになっている。見出しの文字の大きさとか余白のとりかたとか。
 最後のレイアウトの点は意外に重要だと思います。理論を暗記するときは、ただ文字の情報を覚えるのは難しく、テキストのレイアウトをイメージしながら覚える方が効果的なんですよね。これを書いているのは本試験が終わってから4カ月たった12月中旬です。暗記した理論の細かいところはほとんど忘れてしまいました。でも、理論テキストのイメージは今でもぼんやりと覚えています。たとえば、財産調査の理論では、「左ページの上には任意調査の要件があり、左ページの下には強制調査の要件がある。右ページは強制調査の細かい手続が書かれている」といった大ざっぱなイメージです。
 教材については他にもいろいろありますが、TACの中の人はもうちょっとがんばってほしい。TACのテキストは誤植だらけです。毎回のように正誤表が配布される。テキストだけならまだいいのです。答練の問題にまで間違いがありました。印刷する前に校正はしないのでしょうか。
 大原の講師へ直に質問に行ったとき、たまたま机の上にあった問題用紙が目に入りました。そこには「三校」の文字がありました。三校というのは「初校」「再校」に続いて出す3回目の校正紙のことです。

(追記)TACの「理論マスター」の2014年度版では、理論の重要度表示が追加されているようです。進化してますね。

 

 

答練/模擬試験の問題にも個性が

 直前期(5月中旬以降)は大原もTACも答練が中心で進行していきます。「範囲指定ありの答練が4回、範囲指定なしの答練が2回」という構成も同じです。答練の問題は大原の方がよく練られた良問だと感じました。
 TACの答練は理論を覚えてそのまま書くという問題がほとんどです。もちろん多くの理論の中から何を選んで問題をつくるのか、TACなりのノウハウがあるとは思います。しかし、覚えていることを書き出すだけで、その場で何も考える必要がないというのはどうなんでしょうか(まあ国税徴収法のここ2~3年の試験傾向がそうなっているのも事実なんですけど)。
 また、TACは模範解答が模範解答になっていない。TACの模範解答のすべてを2時間以内に答案用紙に書き込むのは難しいと思います。分量が多すぎるのです。そして、解説のときに講師が「ここまで書く必要はない。ここは省略してもいい」なんておっしゃいます。それって模範解答じゃなくないですか?
 大原の答練では、覚えた理論をそのまま書くだけでなく、ちょっと考えさせられるような問題もあります。模範解答についても「なるほど、ここに注意して答案を作成すればいいのか」と分かるようなものになっています。まあ、模範解答とはもともとそういうものだと思うんですけどね。

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 TACについて厳しく、大原には好意的に書いてきましたが、別に大原にお金をもらっているわけでもなければ、TACにうらみがあるわけでもありません。利害関係のない一受講者としての素直な感想です。
 また、ここまで書いてきたのは、あくまで個人的な感じ方や考え方です。TACの講義の中でも得られるものはたくさんありました。たとえば、国税徴収法の枠にとらわれることなく、民法の考え方も取り入れた解説などとても参考になりました。そうした視点が、私が今回の本試験で合格点をとれた要因の一つになっているのは確かであり、その意味ではTACの講師に感謝しています。
 ただし、最小の労力で合格点を取るという視点では、私にとってはTACよりも大原のやり方がすぐれているように思えました。国税徴収法を含めた税法の体系をより深く理解したいのであればTACを選択した方がいいかもしれません。おそらくTACの講師陣はそうした深い理解が合格への道だと考えているのでしょう。もしかしたら、そういうやり方の方が合っている人がいるかもしれません。
 私の視点からは大原をおすすめしますが、大原の一人勝ちが望ましい姿でもありません。すでに現時点では受講生の数にダブルスコアくらいの開きがあります。たとえば、答練の第1回の受験者数は、大原299人、TAC80人です。公開模試については、大原393人、TAC192人です。競争のないところに進歩はありません。ここはTACに奮闘してもらって、両校が競い合いながら講座内容をさらにブラッシュアップさせていくことを期待しています。

  

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