税理士試験 国税徴収法 合格体験記(1) - 国税徴収法は面白い

By | 2013/12/21

 今年8月の税理士試験で国税徴収法に合格しました。税理士を目指そうと考えたのは今年3月のこと。3月末から講座を受けて4カ月強で科目合格にこぎつけることができました。
 国税徴収法の試験について情報を集めようとネットを調べましたが、法人税法や消費税法などのメジャーな科目に比べると情報が少ない。そこで、これから受験する方のために自分の経験などを公開しようと思います。

私が国税徴収法を選んだ理由

 税理士試験に挑戦する場合、会計科目(簿記論、財務諸表論)から手を付けて、そこをクリアしてから税法科目に進むというのが一般的です。しかし、勉強開始のタイミングによっては税法から始めてもいいのではないかと思います。
 私が税理士を目指そうと考えたのは3月のこと。試験は8月なので4カ月くらいしかありません。会計科目を4カ月で合格レベルまでもっていくのはかなり難しい。4カ月で合格を目指すなら必然的にミニ税法を選ぶことになります。その中で国税徴収法を選んだのは、大原の説明会に出席して、自分にいちばん合っていそうだと思ったためです。大原によるとミニ税法の特徴は次の通りです。
・消費税法:実務に活用できる知識が欲しい
・固定資産税:資産税のスペシャリストを目指す
・国税徴収法:理論は暗記よりも理解派
・酒税法:理論は少なければ少ないほどいい
 この中であえて選ぶとすれば国税徴収法かなあと。本当にそれだけです。深い考えが合ったわけではありません。しかし、結果として国税徴収法を選択してよかったと思っています。
 では、試験勉強に4カ月間取り組んだ結果、国税徴収法という科目の良いところを列挙していきます。

比較的ボリュームが小さい

 税法科目は暗記力の勝負ですが、法人税法や相続税法などに比べると覚えるべき理論のボリュームが小さい。大型書店(および大原やTACの書籍売場)で販売されている税法の理論テキストを見ると分かります。法人税法や相続税法よりも理論テキストのページ数が少ない。
 ページ数だけで言えば酒税法や事業税などもっとボリュームが小さい科目もありますけど、国税徴収法は重複している理論が多いので、ボリュームの割には暗記しやすいと思います。たとえば、「保全差押」と「繰上保全差押」は別の理論ですけど、要件が違うだけで、効力や手続はほぼ同じ。最初はボリュームの大きさに圧倒されるかもしれませんが、一周してみれば重複箇所が意外に多いことが分かります。
 大原には短期コースというのもあって、国税徴収法については5月に開講する講座があります(要するに3カ月間で合格を目指すというコース)。このコースからも合格者が出ているとか。
 ただし、短期間で合格レベルに達することができるということは、ライバルも同様だということです。高いレベルでの競争になるので、ボリュームが小さいから簡単に合格できるという単純な話でもありません。最終的には理論をどこまでしっかり暗記したかで合否が決まることになりそうです。私の場合、理論テキストのすべて(国税・債権間の調整や換価配当、応用理論を含む)をほぼ完全に暗記しました。

運に左右されず、実力で合否が決まる

 国税徴収法は理論だけの科目といわれます。実は「配当計算」(滞納者の差押財産について、債権者間で換価代金をどのように分配するかを計算する)というものがありますが、法人税法や所得税法の計算とはまったく違います。配当の順位を決めるのが目的であり、金額の計算は電卓なしでもなんとかなるレベル。
 たとえば、差押財産の換価代金が5,000万円だったとして、第1順位の滞納所得税に2,000万円、第2順位の滞納相続税に1,000万円、第3順位の抵当権者に2,000万円と分配する、みたいなかんじ。計算とは言いながら、配当順位の根拠を答えさせる理論問題です。
 他の税法では計算のちょっとしたミス(ケタを一つ間違えた、電卓のキーを押し間違えた)で命取りになることがあります。国税徴収法は理論さえきちんとおさえておけば、電卓の操作ミスなどで不合格になることはありません。つまらないミスによる得点のブレが少ないため、努力が結果に結びつきやすいと言えます。
 ミスであるとすれば、暗記はしていたけれど問題文の趣旨をつかみ損ねて的外れな解答をしてしまうことでしょうか。配当計算で適用する根拠条文を間違えたりすると致命的です。

スタートラインがみんな同じ

 所得税や法人税等の科目は実務経験がある人の方が有利ですけど、国税徴収法はほとんどの人にとって未知の世界です。国税徴収法の実務経験がある人って、税務署や地方自治体で徴収部門に配属されていた人くらいでしょうか。ごく一部の例外をのぞき、みんな同じラインからスタートできるので、税理士試験が初めての人だからといって不利ではありません。会計と関係のない仕事をしている人や学生でも大丈夫。簿記の知識も不要です。

改正が少ない

 たとえ一年目で失敗しても、その次の年も同じテキストを使えます。法人税法や所得税法などは毎年のように大きな改正があって、そこが出題のポイントになることが多く、最新のテキストを使って勉強しなければなりません。国税徴収法は手続を定めた法律であり、昭和34年の大改正時には徹底的に議論がされたので、その後は細かな手直しがあるだけです。一発で受かるのが理想ですけど、もし失敗しても次につなげることができます。

意外に内容が役に立つ

 国税徴収法って他の税法科目と位置づけが一つだけ違うんですよね。租税法上の分類からすると、他の税法科目はすべて課税要件を定めた「租税実体法」であるのに対し、国税徴収法だけは滞納国税の徴収手続を定めた「租税手続法」になります。また、他の税法科目を「特別法」だとすれば、国税徴収法は国税に共通した事項を定めた「一般法」です。
 国税徴収法は税務署が滞納国税を徴収する手続を定めた法律ですが、単に国税を確保するだけの目的で作られたものではありません。国税と競合する債権者を保護したり、滞納者の権利を保護するための規定も設けられています。つまり、国税徴収法を学べば、税務署の手の内を知るとともに、納税者を守る措置の法的根拠を知ることもできます。
 それに国税徴収法で扱う内容自体も面白いです。差押をするにはどういう条件がそろう必要があって、具体的にどんな手続で進んでいくのか。テレビドラマや小説でも差押ってけっこう出てくるのですが、そのたびに「この差押ってどういう法的根拠でやってるんだろう。この場合は差押できないんじゃない?」なんて別の見方で楽しめます(私はそういう視点で「半沢直樹」も見ていました)。

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 ざっと思いつくままに国税徴収法の良いところを書き連ねてきましたが、これだけではなく、書き忘れたことがあるかもしれません。まじめな人だと「実務につながる科目を選ぶべき」と考えがちですが、国税徴収法も良いところがいっぱいあるのでぜひ選択肢の一つとして考えてみてください。
 「消費税や相続税の方が実務でも役立つ」なんて言われるけど、それってどうなんでしょうね。勉強時間のかなりの部分は試験対策であって、実務のために勉強するのであれば別の効果的な方法があると思うんですよ。税理士試験に通ることが目標なのであれば、「実務」なんて視点って捨てた方がいいんじゃないかと。まあ、これから会計事務所の就職先を探すなんて人だと話は違ってきますが…。

    

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